１９７３年版を考察

◆１９７３年のカード構成
　日本にカルビープロ野球カードが初めて誕生したのはこの年。発売されたカードは、通し番号№１から３６８までの３６８種類。しかし、中には、同じ番号であっても裏面のコメントが異なっていたり、写真が異なっていたりするバージョンも多く発見されているため、今となっては正確な把握は難しいと思われる。
　各チームのカード化された選手数を調査した結果、以下のようになった。予想されていたことではあるが、巨人が断トツの１位、続いて中日、広島とセ・リーグのチームが続く。人気面を考えれば当然かも知れない。今でこそ、各球団カード化される選手数は、基本的に同数。これが良いのか悪いのかはまた別の機会に論じるとして、今はその結果のみを記して先に進もう。
　それから、注記しておかなければならないことが２つある。
　１つは、通し番号の№１から９１は、バット版と旗版の２種類が存在すること。№９２から３６８までは、バット版は存在しない（№９２から３６８は、特に旗版とは呼ばない）。
　そして、もう一つは、地方版が存在したこと。特に、西日本地区には、太平洋、中日、広島のカードが多く出たようである。人気面から考えれば、巨人、阪神のカードは全国で　満遍なく出現させたのであろう。素人考えではあるが、巨人のカードはファンも多かったため、現存されているが、パ・リーグのカードが出たら、人気もなかったため捨てられたケースがかなりあるのではないだろうか？

◆球団別選手数調査
　①巨人　　（１２２枚）33.1％　 　①太平洋　（　３４枚）09.2％
　②中日　　（　４３枚）11.7％　 　②南海　　（　２８枚）07.6％
　③広島　　（　４２枚）11.4％　 　③阪急　　（　１７枚）04.6％
　④阪神　　（　３３枚）09.0％　 　④日拓　　（　　６枚）01.6％
　⑤大洋　　（　１１枚）03.0％　 　⑤近鉄　　（　　５枚）01.4％
　⑥ヤクルト（　　７枚）02.0％　 　○混合　　（　２０枚）05.4％

　円グラフ１「７３年球団別発行数調査」

　混合とあるのは、１枚のカードに複数チームの選手が写っているもの。ただし、同一チームの選手のみで構成されているものについては、そのチームの中に含めた。なお、ロッテ球団の選手のカードは発行されなかった。

◆セ・パ・リーグ別調査
　セ・リーグ、パ・リーグの割合も参考程度に記しておくとする（混合数は除いた）。
　実際、どの程度、パ・リーグとセ・リーグの人気差があったのかは、私には分からない。
　円グラフ２「セ・パ・リーグ別調査」

◆“バット版”と“旗版”
　冒頭にも書いたが、№１から９１までは、通称「バット版」と、「旗版」がある。写真を見ても分かるように、写真（表）、裏面のタイトル、コメントは同じ。
　異なるのは、カード上部のデザイン。バット版の上段は「プロ野球物知りカード」、旗版は「プロ野球カード」と記されている。
　さらに、バット版は、バットが２本使われている。このうち、通常２本のバットがグリップ付近で交差しているが、通常、左右どちらか一方が上に決まっている（№１～５０、№５２～６３）のであるが、次に示すもの（№５１、№６４～９１）については、各№ごとに右が上になっているものと、左が上になっているものが存在している。
　
左から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　左から
№２０　柴田勲（巨人）（バット版）　　　　　　　（裏面）
№２０　柴田勲（巨人）（旗版）　　　　　　　　　（裏面）

“バット版”と“旗版”の違いを確認

左から
№２０　柴田勲（巨人）（バット版）
№２０　柴田勲（巨人）（旗版）　　　　　ともに裏面の拡大写真

バットのグリップが左右どちらが上か？　を確認
　
左より
№７２　渋谷幸春（中日）（バット版）…右バットが上（グリップ部分）
№７２　渋谷幸春（中日）（バット版）…左バットが上（グリップ部分）


左より
№７２　渋谷幸春（中日）（バット版）…右バットが上（グリップ部分）
№７２　渋谷幸春（中日）（バット版）…左バットが上（グリップ部分）ともに拡大写真

◆バージョンの異なるカードの存在
　バット版と旗版が存在していることは、先ほどの項目で説明したとおりだが、バット版と旗版で、写真が同じもの、異なるもの、さらに旗版の写真が複数存在するもの…、といった具合にカードによってバリエーションがある。簡単にまとめておく。

①バット版、旗版で写真が同じもの
　№１から９１まである中で、いちばん多いのがコレ。№１の長島茂雄もそう。だから、カルビーは、当初このパターンしか想定していなかったのでしょうね。
（②、③、④で該当しない全てのカード）
　
左から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　左から
№１　長島茂雄（巨人）（バット版）　　　　　　（裏面）
№１　長島茂雄（巨人）（旗版）　　　　　　　　（裏面）

②バット版、旗版で写真が同じもの、さらに、旗版で、もう１枚の写真が存在するもの
　長島の場合は、写真がいまいちになった感があるが、ここで紹介する平松は、新ユニフォームで旗版の後期に登場。なお、旗版Ｂは、西日本で流通したらしい。
（№３　９　５４　５５　５６　５７　５８　５９　６２）

左から
№５７　平松政次（大洋）（バット版）
№５７　平松政次（大洋）（旗版Ａ）
№５７　平松政次（大洋）（旗版Ｂ）※この他、異種有


左から（すべて裏面）
№５７　平松政次（大洋）（バット版）
№５７　平松政次（大洋）（旗版Ａ）
№５７　平松政次（大洋）（旗版Ｂ）

③バット版、旗版で写真が同じものと異なるもの、さらに、旗版で、もう１枚の写真が存在するもの
　ここで紹介する外木場は、写真としては初期のものが１番良いと思うのだが…。なお、旗版Ｃは、西日本でしか流通しなかったようである。
（№５９　６１）

左から
№５９　外木場義郎（広島）（バット版）
№５９　外木場義郎（広島）（旗版Ａ）
№５９　外木場義郎（広島）（旗版Ｂ）
№５９　外木場義郎（広島）（旗版Ｃ）


左から（すべて裏面）
№５９　外木場義郎（広島）（バット版）
№５９　外木場義郎（広島）（旗版Ａ）
№５９　外木場義郎（広島）（旗版Ｂ）
№５９　外木場義郎（広島）（旗版Ｃ）

④バット版で２種類のバージョンが存在するもの
　珍しく、バット版が２種類あるケース。違いは、バット版Ａが横向きに対して、バット版Ｂは、縦向き。
（№１４）

左から
№１４　堀内恒夫（巨人）（バット版Ａ）
№１４　堀内恒夫（巨人）（バット版Ｂ）
№１４　堀内恒夫（巨人）（旗版）


左から（すべて裏面）
№１４　堀内恒夫（巨人）（バット版Ａ）
№１４　堀内恒夫（巨人）（バット版Ｂ）
№１４　堀内恒夫（巨人）（旗版）

◆写真の向きが異なるカード
　これはエラーカードというものかどうかも分からない。横向きの写真には、こういったケースが考えられる。
（№９６　１０４　１３８　１４１　１９８　２０６）

左から
№１４１　王貞治（巨人）（右側が上）
№１４１　王貞治（巨人）（左側が上）

◆キャプションが異なるカード
　ここで紹介するのは、日拓の張本勲選手。左は、「張本ヘッドコーチ兼外野手（日拓）」、右は、「張本外野手（日拓）」。このように、表面の文字が異なるものがいくつかある。
（№６８　７１　１０３　２０７）
　
左右ともに　　　　　　　　　　　　　　　　　　（部分拡大）
№２０７　張本勲（日拓）

◆表面文字の色違い
　何組か確認している。ここでは、柳田真宏選手のカードを紹介しよう。初めは、黒文字で発行されたが、背景とカブるため、途中から修正され、白文字になったのであろう。
（№９２　１１３　１３９　１４０　１５３　１６８　１７７　１７９　１８２　１９９　２４２　２５０）
　
左から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（部分拡大）
№１７９　柳田真宏（巨人）（黒文字）　　　　　
№１７９　柳田真宏（巨人）（白文字）　　　　　

◆裏面の得点の記載が有るものと無いもの
　シリーズ後半に、多く存在している。表面は、全く変わらないのだが、裏面の下部に得点の表記があるものと無いものがある。
（№３０５　３１０　３２６　３２７　３３０　３３３　３３５　３３８　３４０　３４１　３４３　３４４　３４６　３５２　３５４　３５５　３６３　３６４　３６６）

左から
№３６６　野村克也（南海）（得点無）
№３６６　野村克也（南海）（得点有）

　
左から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　上から
№３６６（得点無）（裏面）　　　　　　　　　　　№３６６（得点無）（裏面拡大）
№３６６（得点有）（裏面）　　　　　　　　　　　№３６６（得点有）（裏面拡大）

◆地方版
　私の持っている“地方版”カードの一部。地方版と思われるカードの特定は、ベースボールマガジン社で出版されている「スポーツカード」という雑誌のリストで確認。市場では高額な値段で取引されているためコンプリートは最初から断念。水島さんの息子さんはすべて持っているのだろうか？
　
左から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　左から
№２６８　東尾修（太平洋）　　　　　　　　　　（裏面）
№２９４　国貞泰汎（広島）　　　　　　　　　　（裏面）

◆その他
　エラーカードを紹介する。
　まず、１９７３年の大洋ホエールズのカードであるが、旗版の裏面に注目したい。選手名の右側に記載されている表記が“太洋”となっているのだ（正しくは、“大洋”となるべきである）。今では考えられない誤植であるが、当時はこれが、７３年後半まで気付かなかったのだろう。７３年の大洋のカードは、全部で１１枚発行されているが、そのうちの前半に発行された９枚は、裏面がすべて、太洋となっている。
　
左から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　左から
№５４　江尻亮（大洋）旗版Ｂ　　　　　　　　　（裏面）
№２００　竹内広明（大洋）　　　　　　　　　　（裏面）


左から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
№５４　江尻亮（大洋）旗版Ｂ（裏面拡大）
№２００　竹内広明（大洋）（裏面拡大）

　後半発行された№３０３の平松政次（大洋）、№３０４の松原誠（大洋）は、“大洋”と正しく表記されている。

左から
№３０３　平松政次（大洋）
№３０４　松原誠（大洋）


左から（すべて裏面）
№３０３　平松政次（大洋）
№３０４　松原誠（大洋）


左から
№３０３　平松政次（大洋）（裏面拡大）
№３０４　松原誠（大洋）（裏面拡大）

　続いて、“太平洋”と“大平洋”の表記。一見するとわからないのだが、よく見ると、点があるのとないのとが存在していることに気づく。修正版が出たことになっているが、エラー版と修正版とでは、どちらが多く存在しているのだろう。よく見たら、修正版の方は、「基」と「二塁手」のあいだにスペースが無くなっている。
　このパターンは、№１２１　東尾修（太平洋）も同様にあった。太平洋の他の選手もまだあるかも知れない。
　
左から
№１１７　基満男（エラーカード）“大平洋”と記載　　上　（裏面）“大平洋”と記載
№１１７　基満男（修正版）“太平洋”と記載　　　　　下　（裏面）“太平洋”と記載

　最後は、№１１５の竹之内雅史（太平洋）のカード。こちらは、西日本でのみ流通したようである。竹之内雅史選手は、右投げ右打ちであり、西鉄・太平洋・クラウン、阪神で活躍。
　で、カードに目を移すと、左のものは、エラーカードで左打ちの写真になっている（よく見たら、胸に書かれている“ＬＩＯＮＳ”の字も逆になっている）。そこで、おそらく修正版が発行されて、それが右のカードということになる。

左から
№１１５　竹之内雅史（太平洋）エラーカード
№１１５　竹之内雅史（太平洋）修正版

◆１９７３年シーズンを振り返って
　という項目を作ったが、私が記憶している野球の歴史は１９８１年から。それまでは、各チームのシーズン順位や、シーズン記録等を参考にコメントをする。
　まず、１９７３年という年は、ジャイアンツＶ９達成の年。勝率わずか４厘差で阪神をかわしての優勝というところか。パ・リーグは、前期の覇者・南海、後期の覇者・阪急で、プレーオフの末、南海が優勝。シーズン年間勝率はかなりの差で阪急が勝っていたが、決定戦では南海に敗れた。
　日本シリーズでは、ジャイアンツが南海を下し、見事Ｖ９を達成。
　個人タイトルを見ると、セ・リーグでは、王貞治（巨）が自身初の三冠王。投手部門のタイトルでは、防御率は、安田（ヤ）、最多勝は、江夏（神）、最多奪三振は、高橋一（巨）。なお、江夏（神）は、ノーヒットノーラン達成（延長１１回）。
　一方、パリーグは、首位打者が加藤英（急）、打点王と本塁打王は長池（急）、更には、盗塁王が福本（急）と、阪急勢が独占。また、八木沢（ロ）が完全試合。高橋直（日）が、ノーヒットノーランを達成している。
　新人王は、セ・リーグが該当者なし。パ・リーグは、新美（日）。
　　　　　　　　　　
№３６５「巨人、九年連続のペナント」　　　　　　　№３６８「シリーズ表彰選手」

◆収集状況
　本年の不所持カードは、残り５枚となった（２０２０年３月１日現在）。その中のファーストカードだけは、入手したいと考えている。
　金城基泰（広島）さえ入手できればいいのだが…。
　残り４枚となった（２０２１年１１月１日現在）。

◆その他のトピックス
　１９７３年重複枚数整理
　１９７３年ファーストカードを追え
　１９７３年の景品
　１９７３年の地方版とは？
　１９７３年のコアなページ
　１９７３年登場選手名鑑

　カルビープロ野球チップスカード大好き